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2004.09.26

遠藤彰子——力強き生命の詩

 府中市美術館。雨の中、府中まで行ってきただけのことはあった、というか、今年見た展覧会の中でも1、2を争う素晴らしい展覧会じゃないだろうか。
 とにかくどれも大きな絵。ピラネージを思わせる建築の迷宮、ブリューゲルを思わせる緻密で多種多様で限りない数の人の群れ。饒舌な物語性。大迫力。いくら見ていても飽きない。でも、美術手帖がこういう作家をばーんと特集することはないんだよね……ん〜、まっいいか。
 現物を見なければわからないこの至福感。この作家は、賞をとったときの安井賞展(86年)をたまたま見ていて、そのときにおおおおぉっとくるものがあったので、こうして再会(?)できたのは感慨があるというか、なんというか、幸せ。
 なお、カタログは1500円でとても良心的なのだが、しかもそれには「Akism」という遠藤自身による冊子が付録としてついてくる!!制作の過程をかいま見れたり(絵ができあがっていくところやアトリエの様子など)、イラストエッセイ風なのが載っていたりと、はっきりいって、カタログ本体より面白い。しかも、「付録の冊子」とはいえ、50ページオールカラーの堂々たるもの。展覧会カタログも、こういうのにすると楽しいよね……。なので超お買い得なのでした。
 蛇足だけど、遠藤の作品の中でも横幅6メートル50っていう特大のがあって、しかも「個人蔵」なんだよね。そんなんどういう豪邸なら持ってられんだろうって、ちと思った。……そんだけ。

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パパ・タラフマラ「島〜ISLAND」

スタジオSAI。初見。
出演者2人、セットらしきものもないシンプルな舞台。
最初の動き出しからパパタラ的身体のボキャブラリーがあふれ出し、すぐに作品に引き込まれてしまう。
そして聞く者のいない言葉、言葉にならない声と叫び。
日常の世界律とはまったく別なところに誘ってくれる。そして根源のエネルギーを与えてくれる。

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2004.09.21

ヴィタール

 試写。塚本晋也監督。
 不思議な感触の映画。まだ頭の中が整理できていないが、医学生の記憶消失に解剖実習が非常に効果的にからみあい、記憶というものの存在が、肉体(現実)とは切り離された別個のものとして意味づけられている。映像は美しい——雨が降りしきり、頽廃的な場面が多いが、人体解剖のシーンはグロテスクではなく、アクは適度に押さえられている——というか、今回は閉塞と開放の両方の美しさがみごとに共鳴している。主演の浅野忠信はもちろんヨシとして、映画初出演のふたりのヒロイン(牧阿佐美バレエ団の柄本奈美と建築科出身のモデルKIKI)もいい(好みだなぁ)。とにかく不思議な「非」現実感であり、それを狂気で彩らずに冷徹に描いたところが、ふわりとした奇妙なトリップ感を誘う。公開は12月。
 なお、大島早紀子(H・アール・カオス)が振付で協力しています。

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東京国立近代美術館・琳派RIMPA展

 やはり祭日、混んでたぁ。この美術館でこんなに混んでたのは初めてかも…いや、人の入らなそうなのばかり狙って行ってるのかもしれないけど(笑)。
 琳派の再発見から現代美術への影響までを一望したこの展開会、おばちゃまたちに囲まれながら、現代美術にこれだけの人が入ればのう…と思いながら回っていたが、正直この会場では、琳派の迫力はその後のRIMPA的作品を圧倒していたように思う。
 でも、こういうような形での古典と現代の競演はもっとおこなわれていいのでは。私は面白いと思う。

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コスプレ喫茶

 イラストレーターの井手さんと、彼女のつよ〜い希望で(!)、なぜか秋葉原のメイド喫茶でTHの打ち合わせ(笑)。な、なぜだ(笑)。別に店員がコスプレしてたからってどーよ、って思うけど、井手さんは、「常連さんには『お帰りなさい』なのに、自分には『いらっしゃいませ』だった」のが悔しかった模様(笑)。また、次の特集には参考にならなかった様子なのでした。

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2004.09.20

なぜ祭日だというのに

いつもより早く会社に出てきて、昨晩の残りのカレーをあっためて食べているのか……。
別に祭日なのを忘れていたわけでも、カレーが食べたかったわけでもないやい(涙)。
うーー今日は充実した1日が過ごせそう(怒)。

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2004.09.17

うわっ、「女着ぐるみ」かっ!

 Oギャラリーeyesで、18日までおこなわれている横溝秀実+児嶋サコ「セルフ コンシャス」展、私が行けないので大阪のイラストレータ、河野悦子さんに足を運んでもらう……っと、や、やはりヒットした!!
 く、詳しくは次号で……!! 足を運べる方はOギャラリーeyesにお出かけ下さいませ。

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2004.09.16

メモメモ

単なる覚え書き。
渋谷区立松濤美術館・瑛九 (〜9/20)。資生堂ギャラリー・小金沢健人(〜9/26)。府中市美術館・遠藤彰子(〜10/3)。東京国立近代美術館・琳派(〜10/3)。東京都写真美術館・ウィリアム・クライン(〜10/6)。損保ジャパン・ピカソ(〜10/24)。世田谷美術館・ヨルダン(〜11/7)。東京都庭園美術館・ノルデ(〜11/7)。国立西洋美術館・マティス(〜12/12)。東京都現代美術館・ピカソ(〜12/12)。東京オペラシティアートギャラリー・ヴォルフガング・ティルマンス(10/16〜12/26)。ワタリウム・ラリー・クラーク(10/1〜1/30)。

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ほんとに3日坊主になっている……

 BBSに「小学生のときから日記は3日以上続けられた覚えはないが……」と、このBLOG開始のお知らせをしたら、ほんとに3日坊主になっていたこと発覚! や、やばいので何か書きます。

 先週末はオシゴトだったのでどこにも行かず何もせず。シゴトしながら、ふと最近全然舞台を見ていない自分を発見し、のたうち回る。ああ、パパ・タラフマラの「見えない都市の夢」も行ってない……これは「百年の孤独」プロジェクトの第一作目にあたる作品。そう!ガルシア=マルケスなのだ! パパタラは、もう何年前か忘れてしまったけど、新宿スペース・ゼロでやった「パレード」の再演を見てから結構ファンなのだが、TH Seriesではちこっとレビューを書いているくらい……必殺隠し球ってやつですね! ああ、でもそれ考えるとますます「見えない都市の夢」を見逃したのが痛いなぁ。

 パパタラの舞台は、演劇でもダンスでもない、イメージのきらめきに彩られた舞台。「パレード」のあたりは声を発することはあるが言葉は喋らず、人間の理性を超えた、人知では推し量れない世界を感じさせたが、昨今は言葉を使うようになったとはいえ、題材はシュルツの「ストリート・オブ・クロコダイル」やガルシア=マルケスの「百年の孤独」だったりするので、「人知を超えた」世界律への憧憬は一貫して感じられる(ということは、ちゃんと舞台を見て書けよ、って感じだけど)。「百年の孤独」は見逃すまい!

 話変わって……よく思うこと——パパタラも演劇やダンスなど特定のジャンルにカテゴライズされない活動をしているけれど、以前ある本屋で、TH No.21にもご寄稿いただいた乗越たかお氏の「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド」(祝・増刷=非常に面白いガイドブックです)が「バレエレッスンの何とか」とか「社交ダンスの何とか」とかいう本と一緒に並んでいるのを見て、そりゃ違うだろと思ってしまったのだが、本屋には「バレエ」という棚があるとしたら、そこにダンス関係はすべて押し込められてしまう……それはどうにかならないものだろうか。私の主観的な思い入れでは、コンテンポラリー・ダンスは、バレエよりも現代アートに近い。パパタラもね。
 本屋の面白みのなさは、「映画」「演劇」「文学」「人文」といったジャンル分けが平然とまかり通っているところだ。最近「サブカル」なる棚が浸透してきたが(TH Seriesもここに分類される場合が多い)、言ってしまえば既存のジャンルに分類できない際物がここに集められる。「サブカル」の成立は、既存のジャンル分けの崩壊を意味しているのだ。ここはジャンルではなく趣味趣向に合わせた棚作りができないものかのう。前衛系とか、保守系とか、ヤバメ系とか、癒し系とか、ゴシック系とか、凡庸系とか……セレクトショップの集合体みたいな本屋(ヴィレッジヴァンガードがちょっと近い)。そういう大型書店(大型がいい!)あったら面白いと思うけど(伊勢丹メンズ館の成功を見習って!)

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2004.09.09

ギュンター・ユッカー「虐待されし人間」

栃木県立美術館。「釘男」の異名を持つユッカーの個展。でかい釘を木に打ちつけまくった作品など、自虐的贖罪的ともとれる作品が並ぶが、マトリックス状に木の棒を打ったものなどは、それが整然としているだけに余計に狂気が——爆発することさえ許されない狂気が感じられる。そうしたオブジェに塗られた「白」は、罪や汚れを浄化する「白」だとも言われているが、その塗り方は非常に雑で、オブジェの肌がはっきりと見えていて、ちょっとした浄化では拭い去れない罪(?)の深さを逆にクローズアップしているようにも見えた。
なお、同時におこなわれていた日本の作家によるビデオアート上映「ピクチャー・イン・モーション」は、結構最近の作品が並んでいるのだが、感覚の古さ、スピード感のなさ、同時代感覚の欠如が目に付くものが多く、残念。今年始め、東アジアの現代美術を取り上げた「アウト・ザ・ウィンドウ」展(国際交流基金フォーラム)で同様なビデオ上映があったが、こちらは結構面白く楽しいものがあっただけに、よけいにね……。むむーん。

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2004.09.08

夢見るタカラヅカ展

このところ一番足を運ぶ美術館は、この東京オペラシティアートギャラリーかもしれない。閉館1時間前になると半額になるのもうれしい。宝塚のファンではないが、森村泰昌や蜷川実花、西山美なコの作品など結構楽しめた。特に閉館間近で人のほとんどいない空間でじっと見入ってしまったのが、やなぎみわの映像作品。彼女はちょっとした異様さ、気色悪さを表現する匙加減が非常に絶妙。決して過剰過ぎず、でも確かな後味は残る。東京で個展してくれないだろうか。

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2004.09.07

横溝秀実+児嶋サコ「セルフ コンシャス」展

2004年9月6日(月)から9月18日(土)まで、大阪北区のOギャラリーeyesで、
開廊5周年記念・横溝秀実+児嶋サコ「セルフ コンシャス」展が開かれます。
[児嶋サコはNo.21「少女×傍若無人」に関連記事]

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森美術館——小沢剛展「同時に答えろYESとNO!」

「地蔵」のシリーズがまだ続いていると知って驚いた。
日本、いや世界各地に出向いて、掌サイズの地蔵、もしくは地蔵の絵
(といってもどちらかといえば、こけしに見える……)を
ちょこんと置いて(壁に貼って、道路に描いて、などして)
記念写真をカシャリ、というこのシリーズは、天安門や板門店などにも
でかけながら、そこにちょこんと置いてささっと撮って逃げてくるみたいな、
そんな小心者的なスナップ写真でとても面白い。
声をあらぶらせない、ささやかな自己主張と抗議と皮肉。
「ねぇ、けんかはやめようよ……」というぽつりとしたつぶやきが
のちのアートサッカーやベジタブルウェポンの作品にも通じる。

あと、小沢剛と言えば、木製の牛乳箱の中の空間を使って
いろんなアーティストに作品を作ってもらった「なすび画廊」が有名だが
いちばんウケたのが同じ40年会の会田誠の作品だった。その名も「さりん」。
牛乳箱を覗くと「さりん」と書かれた牛乳瓶が入っているのだ(実際の作品は絵だが)。
これは恐ろしい(笑)。牛乳箱という、日常的で凡庸な装置と
「さりん」という脳味噌とろけそうな平仮名と、サリンそのものの
おそろしさが非常に強烈な化学反応を起こしているような……
まぁ、そんな感じ。

でもそれは、会田や小沢の脱力的破壊力ともいうべきものを象徴しているよね。
その行間に「昭和」がにじみ出してくるのはなぜか、ということは
ちまたの「昭和」ブームの根強さとともに検証されるべきなのでしょう。

つーわけで、とても楽しめた展覧会でありました。

(それにしても、アートサッカーに登場した児嶋サコ、
なんでわざわざハムスターの格好になるかなぁ(笑))

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フェア情報(紀伊國屋書店宇都宮店)

紀伊國屋書店宇都宮店でバックナンバーから最新刊まで平積み中。
(芸術書の工芸書コーナー近辺)

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