マティス展
国立西洋美術館。休日の昼下がり上野に来て美術館の前の人だかりを見ると、よくこれだけの人が集まってくるものだといつも不思議に思うというか感心するというか。
その昔、上野から池袋にあったセゾン美術館に回って人出の落差に唖然としたことがあるが、いま現代美術展の人集めに関しては森美術館ががんばっているからね……目的が展望台であっても、ここはヨシとしておこう(本当の美術ファンが近寄り難くなってしまわないよう願うけど)。
さて、ようやくマティスに行ってきた。マティスはある意味天才かもしれないが、逆に天才であるフリをしない。
いつも迷っているがそれを隠すことがなく、こんなのチョチョイのチョイだよ、なんて自慢げに鼻を高くすることなんてしない。
切り絵だって、寄席とかの芸なら、ツギハギなんてしたら客から、「そんなの芸じゃない、素人め」って怒られるかもしれないが、マティスは平気でツギハギする。
だから切り絵も、小さなポストカードだと美しく見えるかもしれないけど、実物は切れ目もギザギザだし、細部を見るとちっとも美しくない。
それはまるでマンガ家の原画みたいだが(マンガは原画が汚くても縮小されて印刷されたものがキレイに見えればそれでよいのだ)、もしかしたらマティスは複写されて印刷されることを前提にして描いていたのではないかとさえ勘ぐりたくもなる。
油絵の作品だって、ハッキリした色使いとフデのタッチの希薄さゆえに、印刷されても元の絵とは遜色のないものに仕上がりそうだ。
もちろんカタログを見ると、ああやっぱり元の作品とは全然違うなぁと思うのだけれど、額に入れられた複製画などは、こっちの方がいい色じゃんとか思ってしまったりもするのでした。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント