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2005.09.27

ローリー・アンダーソン@ICC

会期終わり間近になって、滑り込み。
彼女のアートは、テクノロジーの可能性と戯れていただけに、
いまから振り返るとなんてこともないものも多く、もの悲しさを感じてしまう。
(いやもちろん、当時としてはたいへんな努力をして作り上げたのかもしれないが)
そこから導き出されるメッセージも、強烈なコンプレックスや
悪辣な皮肉が塗り込められているわけではなく、概して凡庸だ。
だけど、そこに漂うそこはかとない孤独感に、なんとなく惹き付けられる。
ローリー・アンダーソンには、こういうテクノロジーの文脈ではなくて、
違った評価のしかたもあっていいと思わないでもない。
10/2まで。ICC.。

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2005.09.19

清水真理@Luft Scholoss

新宿コールデン街。
店を探すのに一苦労(地図ちゃんと見ていけよ)。
しかも外には何の告知もないし昼間空いてるとも書いてないので、恐る恐る扉を開ける。
黒い壁面。狭いが天井の高い妙な空間。そこがLuft Scholoss
清水真理の人形は天井からかわいらしくぶら下げられていて、箱を使ったコーネル風の(というかパラジャーノフだな、このシュールさは)コラージュ作品も面白い。
人形にとどまらず果敢に表現の幅を広げているのが興味を惹かれるところ。
(でもぜんぜんフォローできていないのだが……。
ちなみにHP表紙のチャイナ娘がよいですねぇ)

でもここはゴールデン街。
3年前ゴシック特集出したときは、「ゴスロリ」の言葉もふつうの人はよく知らないだろうと思っていたし、
ドール特集のときも、ふつうの人は怖がるかなぁとか思っていたのだが、
なんだかもう、どちらもこの数年でかなり認知度あがり、あらたな展開を迎えているような、そんな気もします。
で、暗黒つながりで、舞踏との関係ももっと認知されると面白いでは、と思っていたり。

残念ながら清水真理のこの展示は18日まででした。

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2005.09.17

杉本博司@森美術館

sugimoto東京都現代美術館ではイサム・ノグチ、そして森では杉本博司と、まず欧米で評価された巨匠の回顧展が相次いでいる。日本的な感性、といってしまうと凡庸な言い方だが、でもエキゾチズムに走ったものではなく、その奥底にある静けさや空疎さの美学みたいなもので独自の世界を作り上げているところが、ふたりには共通しているように思う。
杉本は、劇場内部を映画の上映中シャッターをずっと開放したまま写した作品や、なにもない海の水平線を世界各地で撮影した作品などで知られているが、そうした個々の作品はもちろん、展示会場の雰囲気を味わうためにもぜひ訪れたい展覧会である。
感激ものなのが、海の水平線を写した作品群が並ぶ部屋だ。
仕掛けは伏せておくが、私はこれはかなりグッと来たぞ。
あの、何も映っていない作品が並んでいるだけなのに!!
(どこの海で写した、という写真のタイトルがほとんど見えないのもいい。そんなことにおよそ意味はないのだ)

ジオラマや蝋人形観の写真など、他人の創造物を撮っただけじゃん、と思ってしまいがちな作品も多いが、
そのウラには確固たる技術と概念があることが、会場を巡っているとはっきりしてくる。
時空間を超越した、人間の目では決して捉えられない“リアル”を印画紙という二次元に定着し提示すること——それに対するなみなみならぬこだわりが、どこにもありそうでいて唯一無二の作品群を生み出し続けている。
来年1/9まで。六本木ヒルズ・森美術館にて。

ああ、イサムにも会いに行かにゃ〜。

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2005.09.16

ASADA ; 大巻伸嗣

大巻伸嗣は資生堂ギャラリー
雑誌に載っていた展覧会の写真を見て、なんだ床に花の模様が描いてあるだけジャン、とか思っていただのが、それは全然本質的なことじゃありませんでしたね。
まず驚かされたのは、このギャラリーは地下にあって、階段を下りる途中でギャラリーの様子が上から見下ろせる構造になっているのだが、大巻はその視線を薄く白い布で遮った。
天国などの別世界に降り立つかのような感覚を覚えさせる。
だが、下に降りて目にするのは、無惨にも人に踏みつぶされてただの色の塊になっている花の絵だ。
床一面に綺麗に描かれていたはずの花が、跡形もなくなっている。
(元の様子は、奥のアクリル板に覆われた部分でうかがうことができる)
それは人為の残酷さだが、しかしこの作品はそれだけにとどまらない。
人が踏みつぶした部分のところどころに、また新たに花の絵が描かれているのだ。
そこには逆に、人為のやさしさを感じ取ってしまうのである。
25日まで。

gg_0509P1ASADAはGuardian Garden
23回ひとつぼ展グランプリである。
奇妙な突起などで覆われている陶器の作品など、ヘルメットがトレードマークの作家だが、ドローイングも面白い。
彼女はそのヘルメットによって何かと戦っているのだろうが、でも戦闘の様子を描いた絵を見ると、頭はヘルメットだが、身体は裸で黒パンツ一丁である。
武器もなんも持っちゃいない。
それで戦えるのか?

——おそらく、その戦闘は自作自演だ。
何もない現実に自ら勝手に敵を作り、ドン・キホーテよろしく架空のドタバタに酔いしれているのだ。
そうすることで何かを打ち破ろうとしているのだろう……。

だが考えてみれば、ヘルメットは武器じゃない。防具だ。
なんで防具だけで戦おうとするのか?
……と思ったときに、彼女はもしかしたら、殉死することを望んでいるのかもしれない、と思った。
勇敢な殉死。死によって得られるヒロイズム。
まぁ以上は勝手に想像して書いたことだが、考えてみれば、現実世界では殺すことよりも殺されることの方が難しいのかも。
だから防具でちょっとだけ武装することによって、相手の戦意を刺激しようとする魂胆か。
ちょっと前にやった《気》派展でヘルメットを見て「?」だったのだが、今回ドローイングなども数多く見て、なんとなく世界が見えてきたような気がした。
いや、誤読しているだけかもしれないけど。
22日まで。

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2005.09.15

鏡堂みやび@ヴァニラ画廊

SM絵師である。苦痛に歪んだ顔のリアルな迫力。
でもそれよりも何よりも、この画廊が出しているフリーペーパー「ヴァニラ画報」に載っているインタビューがやたら面白い。
「千擦りかきながら描くにきまってんじゃねーかこんなの」というのはアリだろうが
個人受注の客には絵じゃなくてデータで渡す、「(コンピュータで)拡大して好きな部分をじっくり見れるのがいいのよ」ってーのは目からウロコだったし、
「性格はMの方が絶対攻撃的だぜ。Sは臆病だし繊細なんだ」というお言葉は、この人だからこそ非常に説得力がある。
私は画廊のインタビュアー(女)がその後どう調教されたか知りたい……(笑)。
24日まで、銀座・ヴァニラ画廊。必ず「ヴァニラ画報」を拾ってくるのを忘れずに!!

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2005.09.13

神村恵+荒木志水@タナトス6

まずは神村恵のソロ。
静かに始まる。直立のまま、横に横に静かに身体をスライドさせていき、舞台を横切り、そして戻ってくる。
何か見えないものに拘束されているかのような雰囲気。
しばらくすると、静かに音楽が流れ始める。ボウイの「レッツ・ダンス」。よく知られた軽快な響き。
しかし神村の身体は、その音楽に乗りそうでいて乗らない。踊りそうでいて踊らない。
だが少しずつ縛りは解かれていく。
自由を獲得し、どこかへ飛翔していくようなイメージ。

荒木志水のソロは、まったく逆のベクトルにある。
彼女の身体は、どこか遠い宇宙のかなたから地上に降り立った異星人のものだ。(音楽も、宇宙服のように光る衣装も)
おじぎをモチーフにした作品「デザート」の改正版というが、
「おじぎ」のような人間の単純な動作を真似ようとして、だけどできなくてもがいている、なにか奇妙な生き物。
頭を床に着けて尻を高く上げ、腕を背後に振り上げた格好は、腕と身体がまったく別パーツのように見え、
姿格好からして人間を真似ようとして失敗しているかのようだ。

その対比が、デュオではいかんなく発揮され、非常に面白かった。
ふつうの、わりと身体にピッタリの服装をした神村と、その後ろに、白いひらひらのドレスをまとった荒木。
荒木は神村の後頭部を凝視するが、それは人間に取り憑いた背後霊のようであり、同時に、「おじぎ」を習い、そして倣う異星人のようである。
ドレスの浮き具合が、その異邦性を表彰しており、またその顔は人間ではない魔物の形相だ。
そして神村の単純な動きに呼応するようにして、荒木も踊る。
手を振り、身体をねじり、動きのハーモニーが奏でられる。
しかし、ある瞬間からそれが狂い出す。
神村の単純でゆっくりとした屈伸運動に対し、荒木は大げさにひっくり返し、暴れ回る。
荒木のドレスは乱れ、まったく乱れのない神村の服と、好対照をなす。
動きは再びシンクロし、時にはズレ、また再度共鳴し、やがて人間と異星人(?)は、互いを正しく認識するようになる(たぶん)。
最初は前後に立っていたふたりが、最後は横に並ぶ。
そしてゆっくりお互いを見つめる。
静かに暗転……。

荒木が発案し構成した舞台だそうだが、神村の、いわば「カッコイイ」身体との対比で、荒木の身体の特殊性が際立った感じである。
昼夜の2度公演があったが、どちらかというと全体的には昼の方がよかったように思う。
デュオのズレとシンクロの具合とか。
9/11、タナトス6にて。

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2005.09.12

タナトス6;ご感想受付箱

タナトス6の公演等のご感想受付コーナーを作ってみました。
こちらへコメントでお寄せ下さい。
お待ちしております。
(公演名を必ずお書き添え下さい)

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2005.09.09

いいかげんな奴だギュスターヴ・モロー@Bunkamuraザ・ミュージアム

p_moreauモローの絵画を印刷物で見ていたときは、非常に緻密な絵を描く人だと思っていた。細かい線で、ちまちまちまと。
だけど実物を見ると全然違う。
この塗りのいいかげんさ!
はみ出すとかはみ出さないとかそういうレベルではなく、輪郭線とか関係なく適当な感じで色が擦りつけられていて、でも、10歩下がってみると違うんだな。その大雑把な色が非常にイキイキと絵を彩り煌めかせているのがわかる。
今回の展覧会でも、顔が描いていないのやら半分くらい塗り残しがあるのやらがたくさんあって、習作なのかどうか知らないけど、いいかげんさ(?)をあらためて思い知ったのだった。

それが印刷物になるとちゃんと見えちゃうんだからね。
手抜き加減を知っているベテランの漫画家の絵のようだ。

10/23まで。文化村の手前のブックファーストで前売りを買っていくと100円安くすむ。

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2005.09.06

ムットーニミュージアム@Parco Museum

ムットーニといえば自動人形だし、その機械的に制御された動きや作り出される世界観にはうっとりさせられるが、う〜〜ん、実はオールド・アメリカンなところがちょっと趣味から外れてしまうのだけれどもね。
でも、自動人形も面白いけど、私はそれよりも絵の方が好きだなぁ。
ちょっぴりシュールな幻想世界。
自動人形の展示がメインだったが、絵もたくさん見ることができて満足。
あ、あと、自動人形見るなら、ムットーニ自身の活弁はぜひ聞きたい。
12日まで。30日からは名古屋で。

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2005.09.04

小林嵯峨他・Dance Opening Act @タナトス6

いよいよタナトス6の本稼働開始——!!
最初を飾る公演をレポートしようかと思っていたのですが
非常にたくさんの方にお集まりいただき、
写真を撮るのはおろか会場の中に入ることさえできませんでした。
う〜〜んどんな舞台だったのだろう……。
残念無念。

でも非常に数多くの方にご来場いただきありがとうございました。
狭く暑い中ご辛抱いただき申し訳ありませんでした。

よろしければ、ご覧いただいた方のご感想等をコメントでお寄せ下さい。
今後の運営等の参考にさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

●評判リンク
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ブロググビグビ

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