まずは神村恵のソロ。
静かに始まる。直立のまま、横に横に静かに身体をスライドさせていき、舞台を横切り、そして戻ってくる。
何か見えないものに拘束されているかのような雰囲気。
しばらくすると、静かに音楽が流れ始める。ボウイの「レッツ・ダンス」。よく知られた軽快な響き。
しかし神村の身体は、その音楽に乗りそうでいて乗らない。踊りそうでいて踊らない。
だが少しずつ縛りは解かれていく。
自由を獲得し、どこかへ飛翔していくようなイメージ。
荒木志水のソロは、まったく逆のベクトルにある。
彼女の身体は、どこか遠い宇宙のかなたから地上に降り立った異星人のものだ。(音楽も、宇宙服のように光る衣装も)
おじぎをモチーフにした作品「デザート」の改正版というが、
「おじぎ」のような人間の単純な動作を真似ようとして、だけどできなくてもがいている、なにか奇妙な生き物。
頭を床に着けて尻を高く上げ、腕を背後に振り上げた格好は、腕と身体がまったく別パーツのように見え、
姿格好からして人間を真似ようとして失敗しているかのようだ。
その対比が、デュオではいかんなく発揮され、非常に面白かった。
ふつうの、わりと身体にピッタリの服装をした神村と、その後ろに、白いひらひらのドレスをまとった荒木。
荒木は神村の後頭部を凝視するが、それは人間に取り憑いた背後霊のようであり、同時に、「おじぎ」を習い、そして倣う異星人のようである。
ドレスの浮き具合が、その異邦性を表彰しており、またその顔は人間ではない魔物の形相だ。
そして神村の単純な動きに呼応するようにして、荒木も踊る。
手を振り、身体をねじり、動きのハーモニーが奏でられる。
しかし、ある瞬間からそれが狂い出す。
神村の単純でゆっくりとした屈伸運動に対し、荒木は大げさにひっくり返し、暴れ回る。
荒木のドレスは乱れ、まったく乱れのない神村の服と、好対照をなす。
動きは再びシンクロし、時にはズレ、また再度共鳴し、やがて人間と異星人(?)は、互いを正しく認識するようになる(たぶん)。
最初は前後に立っていたふたりが、最後は横に並ぶ。
そしてゆっくりお互いを見つめる。
静かに暗転……。
荒木が発案し構成した舞台だそうだが、神村の、いわば「カッコイイ」身体との対比で、荒木の身体の特殊性が際立った感じである。
昼夜の2度公演があったが、どちらかというと全体的には昼の方がよかったように思う。
デュオのズレとシンクロの具合とか。
9/11、タナトス6にて。
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