ダイトウノウケン写真展@美蕾樹
ダイトウノウケン写真展「春骨 Blood & Bone」。
土方巽の舞踏の精神の継承に大きな役割を果たしてきたアスベスト館。
競売による立ち退きという不運に見舞われ、2003年に閉館。いまはもうない。
しかしその騒動の渦中、ダイトウノウケン氏がアスベスト館の現状を広く訴えるために開いた写真展がこの「春骨」の契機となる。
その写真展は館長でもあった元藤あき子氏を撮ったものだったが、ダイトウノウケン氏は今度は「妖怪」というモチーフを元藤氏やアスベスト館の若い舞踏家たちに演じさせることを思いつく。
曰く、
「季節は桜のころ、山寺に現れる妖精たちとその子を食しては再生を果たす妖怪の物語です。
古来からの妖怪をモチーフに、登場人物には元藤あき子(がごぜ)、特別出演大野一雄(ぬらりひょん)、
井関結美子(うぶめ)、入月絢(かまいたち)、山本さや香(やまんば)
等他が登場します」
しかしそれにしても、なんて色彩豊かであっけらかんとした妖怪たちだろう!
妖怪というのは、暗闇の中にひっそり息をひそめているような、おどろおどろしい存在ではなかったか。
それが白日の元にしゃしゃり出て、なんとも楽しげにはしゃぎ回っていたりするのである。
もちろん、白塗りのその姿は、ふつうの人が見れば十分に異様だろう。
それだけで「妖怪のようだ」ということもできるかもしれないが、
しかしそれ以上に「妖怪的」なのは、カメラがちゃんと被写体をとらえられていない、ということだ。
いやもちろん、それは写真のテクニックの問題ではない。
背景も光も何もかも設定して、ポーズを決めてシャッターを押す、という類の写真では全然ないのだ。
妖怪たちは逃げる逃げる逃げる。カメラはそれを必死に追おうとするが、妖怪があまりにもすばしっこいがゆえに、ピントはぶれるし足しか映っていなかったりする——そんな状況を想像させるような写真なのだ。
カメラをあざ笑う妖怪の声が聞こえてきそうである。
おそらくそれが意図なのだろう。
まったくその妖怪たちはお茶目でかわいらしい。
ポーズや色や光が、舞踏というものの固定観念を払拭しているといえるし、
逆に、ひとつのポーズに還元されないとらえどころのなさや、「妖怪」という日本人の原風景との共鳴に舞踏の本質が塗り込められているとも言えるかもしれない。
会期中はさまざまな舞踏講演も企画されている。
23日まで。[詳しくはこちら]
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