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2005.12.05

雑感;コウソクEXHIBITION

フローリングと和室がつながった展示スペース。
和室に蚊帳(かや)が吊ってあって、そのなかに女の子(ホンモノ)が閉じ込められている。
閉じ込められている、といっても、所詮は蚊帳だ。
抜け出そうと思えば、簡単に逃げられるだろう。
そんな柔らかな拘束空間。
見る側にとっても、中の少女に手が届きそうで、届かない。
触れられそうで触れることができない。
蚊帳は頑なな拒絶ではなく、目の前にあるけれども手が届かない、
ある意味、神聖な存在を思い描かせる。

そうした蚊帳の距離感が非常に巧みに表現されたのが、
昨日のモリーン・フリーヒルと大澤史郎によるパフォーマンスだった。
かすかなスポットライトの中、真っ白なドレスに、
襟元から長く鮮烈な赤いリボンを下げて蚊帳の中に姿を現すフリーヒルは
まさに神聖さに浮き立って見えた。
蚊帳は決してフリーヒルを拘束するものではない。
むしろ胎児を包み込んで保護する胞衣(えな)のように見える。
なるほど、蚊帳を介する距離感とはそれだったか、と、ちょっと納得する。
パフォーマンスの前半は、フリーヒルが蚊帳を出て、
背後のふすまの中に浮き上がるように消えていくところで終わった。
その無重力感が、まさに人間を超越した存在を思い起こさせる。

後半は、生命力あふれるリズムカルなシーンがあって、そしてまた蚊帳の中に戻っていく。
大澤史郎のヴァイオリンとも相俟って、情緒豊かで神秘的なパフォーマンスだった。

さて、展示において蚊帳の中に入る女の子はひとりだけではない。
人によって人形のようであり、猫のようであり、見せる表情はさまざまで、そのあたりも面白い。
ぼんやりとした灯りの中、蚊帳の中であえて囚われの状況下に身を置く少女たち——
彼女たちはそこで静かに物思いにふけり、本をめくったり、赤いリボンを結わえたり……
ワンドリンク付なので、椅子に座って、しばしのんびりその様子を観察するのもいいだろう。
その世界にだんだん引き込まれていくのではなかろうか……

展示は11日(日)まで。(連日13:00〜)
本日はコウソク+大澤史郎(+女の子)のパフォーマンスあり。
6(火)〜9(金)は20:00〜「沖の未明」の上映もあり。パフォーマンス好きな方にはおすすめです!
10日(土)はAbe"M"ARIAのパフォーマンス。また過激に暴れるのでしょう。
11日(日)はエンディングパフォーマンス。神秘のトビラが閉じられます。

展示・イベントの詳細は[こちら]とか[こちら]

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