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2006.04.30

練馬区美、手塚雄二、山本タカト

練馬区立美術館は「和歌山県立近代美術館所蔵名画展・大正期の異色画家たち」。
「異色」とか「異端」とかいう言葉に弱いもんで。
日本画・洋画・版画などさまざまなジャンルの作品が並んでいたが、
個人的には田中恭吉の版画(妖気渦巻く!)、秦テルヲ(練馬のこの美術館で何年か前に回顧展があった。暗い時期のが好きだが、お茶目な感じなのも面白い)あたりがやっぱりよいなぁ。

日本橋高島屋の手塚雄二は、たぶん新聞屋に招待券もらわなかったら行かなかったかもしれないが、見てみればいいよねぇ。
風景中心の日本画だが、絢爛というよりは静謐で頽廃的な風景。色使いもほんと、暗いのが多い。
だが一番目を引いたのは、東京芸大の卒業制作を始めとする80年代の作品。
風景画とはまったく違った鮮やかな色使いにシュールなモチーフ。
何か表現を模索する若さが感じらられて、確かに風景もいいんだが、こういう作品の方が好きだなぁ。
画題としてはまぁありがちなのかもしれないが。

奇しくも、練馬区立美術館に行ったときに、ちょうど学芸員によるスライドレクチャーがおこなわれていて、覗いてきた。
1910年代から30年代くらいまでの日本の洋画の代表的作品を年代順に写し出して、その変遷(日本における洋画の黎明)を解説してくれたのだが、そこで興味深かったのは、同じ時期の作品であっても、文部省主催の文展向けの作品の保守性と、ヨーロッパのアヴァンギャルドを積極的に取り入れた若い描き手の果敢な冒険の対比だった。
学芸員はその保守性を皮肉っていたが、やはり権威に寄り添うようになると、冒険心がどうしても希薄になってしまう。
手塚雄二も院展出品作が中心だったが、やはりそういうことなのかのう。
もちろん、風景画とかもぐっとくるものも多かったのだが(暗いし!)、個人的には初期のモチーフをもっと探究していって欲しかったなぁ、と、どうしても思ってしまうのだが……。

浅草橋・ルーサイト・ギャラリーでの山本タカト展。
手塚雄二のは、写真等ではわからない微細な凹凸が非常に絵に表情を与えていたし、往々にしてそういった理由で印刷物の方が元の作品よりも劣ることが多いのだが、山本タカトのは、印刷されて色合いがフラットになったもの(つまり、微妙なグラデーションが印刷では再現されないこと)の方が、感触としていいなぁ、という気がした。
原画には原画の良さがもちろんあるのだが。

なお手前味噌だが、練馬区立美術館のレクチャーを聞きながら、「アヴァンギャルド1920」掲載の「アヴァンギャルド年代記」を反芻していた。レクチャーが年代順に作品を追っていたこともあって、あの年代記がぼんやり頭に入っていたおかげで、時代の流れがよく認識できて便利だったのである……(自画自賛、すみません)。

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2006.04.25

LOVE , LIFE , LIVE .

先日、ヴァニラ画廊でおこなわれた山口椿フェティシズム講座を覗いてきたが、その後半におこなわれたモデル・菊池マリによるパフォーマンスはなかなかユニークなものだった。
服を脱いでいって、風船で一生懸命胸を隠そうとするやり方は、ああもう、裸なんて珍しくないんだから、ぱぁっとやっちゃえよ、もどかしい、とか思わなくもなかったが、それはさておき、
このパフォーマンス、観客にスケッチブックとペンが配られて、みんなで菊池マリがポーズを取るところを写生するのである。
結構異様な光景だ(笑。
それはすなわち、どういうイメージを彼女に投影しているのか白状しろ、ということであり、そのものずばり、カいてシャセイしろと言われているようなものだが、みな、会場内で動き回る彼女をよけたり間近に覗き込んだりしながら、カくのである。
絵心のない私は呆然と見ていただけだったが、もちろんそれではま〜ったくつまらない。
……まぁ、そんな感じでした。

で、ぱぁっとやっちゃう、といえば、浜崎みう。
「アヴァンギャルド1920」で堀江ケニーによる写真展をレポートしたが
これがきっかけで(たぶん)、浜崎みうをヴォーカルに、堀江ケニーらが参加したバンドが結成されてしまった。
その名も「LOVE , LIFE , LIVE .」。
写真展のタイトルまんまです……。
写真展の会場でファースト・ライブをおこない、その次はSMショーにゲスト出演して、なんとまぁ潔くぱぁっとやっちゃってました。さすがストリッパー。
でも、その歌は、ストリッパーの余興の域を十分に超えているだろう。
聞かせるんだ、これが。
はっきり言ってSMショーの他のプログラムより見ごたえ(聴きごたえ)があった。
あと、さすがに舞台映えするし、ボケキャラぶっているけど、客の反応をあそこまで探れるのはやはり舞台慣れしていて舞台度胸がないとできないでは。
声だけじゃなく、身体全体でかもしだす雰囲気がまた格別である。
それもやはり身体で勝負してきたがゆえに培われたものなんだろうなぁ。
(誉めすぎ?)

で、その次のライブが、5/13(土)渋谷のコンシールでおこなわれると言う。
19:00オープン、19:30スタート。
ベリーダンサーがゲストと言うが、どんなステージを見せてくれるやら!
超期待してます。

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2006.04.17

清澄白河方面とか、登戸方面とか

清澄白河駅から徒歩、隅田川沿いの工場の中に出現したギャラリー群。
このあいだようやく見てきた。
荷物兼用の半自動エレベータであがると、5階から7階まで、
小山登美夫ギャラリーを始めとして6〜7くらい、ギャラリーが入っている。
特筆すべきは、そのスペースの広いこと!
下手な美術館行くよりも充実度高いでは。

目当ては5FのTaka Ishii Gelleryの「村瀬恭子展」。
以前は水の中に浮遊するような少女像を描いていたが、今回のは、森のなかに棲む精霊のような感じ。
でも、どこか浮遊しているような感覚は同じで、ゴム人形のようにふにゃりとした身体と、意外とリアルな顔のバランスが面白い。
消えてなくなりそうだけど、確かにそこに存在を主張しているというか……そんな印象。

意外な出会いは6FのHIROMI YOSHIIでやっていたAssume Vivid Astro Focusのインスタレーション。
サイケな原色に彩られた空間の中を、赤青のフィルムのメガネをつけて徘徊。もう圧巻。
「村瀬恭子展」は終了してしまったが、こちらは4/28まで。

明くる日には川崎市岡本太郎美術館の「CHIKAKU——四次元との対話」展。
海外で展開された「日本の知覚」展をもとにした帰国展だが、
ここに登場する森山大道も、中平卓馬も、杉本博司も、やなぎみわも、草間彌生もここ数年の間に大々的な個展があって、しかもそこで見てきた作品と結構重複しているのが……うーん、ちょっと目新しさを欠くか。
岡本太郎も写真展があったばかりだしね。

とはいえ印象的だったのは岡本太郎や森山大道、中平卓馬の写真で、
シンポジウムでは展覧会の企画者である伊藤俊治が、短期間に多様な表現を生み出した日本の写真の特殊性を強調し、さらに、かつてポンピドゥ・センターでおこなわれた「日本のアヴァンギャルド展」の冒頭が奈良原一高の写真であったことを例示して、写真という表現に日本の現代アートの特徴を集約しようとしていた(と思う)が、うん、確かにこれらの写真の力強さは、何度見ても心打たれる。

こちらは6/25まで。

帰りは登戸まで歩いたが、街中に「タカラストアー」という文字も痛々しい、スーパーの廃墟を発見!
と思って入口側に回ったら、なんとそこが目指していた古本屋だった。
しかも奥は住居になっているらしい……。
雑然とした妙な作りの店内は、掘れば結構変なのが出てきそうな古本屋だったが、値段はふつう〜ちょい高めな印象。
店内にどこからともなく冷たい冷気が漂っていたのは、なぜだろう……。冷房?暑くもないのに?
次のがその外観なのでした。
Ca240055

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寄稿者情報いくつか

THの寄稿者さんたちの情報いくつか。

4/6発売の『ダ・ヴィンチ』に、文山未絵さんの同人誌「職人芸・新装開店」が紹介されてます。
(呉智英によるコミティアのページ)
なお、コミティアには、文山未絵さんや名栗石(同人誌のPNは“石”)さんが出店されるとのこと。

もうだいぶ経ってしまいましたが、ケラ3月号にあや野さんの絵が載っているらしい。

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2006.04.12

ホルスト・ヤンセン@埼玉県立近代美術館

考えてみれば、埼玉県立近代美術館は、常設展が有料になってから訪れたのは初めてかも。
むかしここから5〜6kmほどのところに住んでいたころは
自転車をえっこらこいで通ったものだが……ここ4〜5年、予算が削られすっかり元気がなくなってしまっていたので、まぁむべなるかなぁという気はするが……。
以前は果敢な展覧会がいくつもあった。「アダムとイブ」とかね。
……でも、久々に訪れてみて、美術館が地元民に定着しているなぁという気はしたなぁ。

で、ヤンセン、その描線の美しさと言ったら、藤田嗣治と比肩する。
なんといっても、細かい線が偏執狂的に増殖していく銅版画がよい。
描写が劇的というか、ドラマチックなので、フランスあたりのコミックを彷彿とさせるところもある。
で、展覧会のサブタイトルは「北斎へのまなざし」とあり、
影響を受けた北斎の作品との接点が検証されているが、
10日の日経新聞によれば
藤田も北斎に強く影響されていたことが手紙の発見によってわかったという。
なんたることよ!
ヤンセンの描線は、北斎を仲介して藤田と繋がっていたとは!
両展覧会を見比べてみるのも面白いだろう!

18禁コーナーもあって、エロエロなヤンセンの春画が展示されているところも見どころ。
思わず何度も往復しながら見入ってしまったが、う〜ん、スケベな奴と思われただろうか……。

新規買い入れがないとはいえ、寄託などにより、常設展も企画を打ち出した展示でがんばっている。
デルヴォーとまたご対面できたのがうれしいよ。
この作品がここに入ったときには、埼玉県に住んでいてよかった!と思ったものだった。

埼玉県立近代美術館では、夏にはマンダラ展、来年にはエコール・ド・パリ展やシュルレアリスム展が企画されている。
いいじゃん。

ホルスト・ヤンセン展は5/21まで。

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2006.04.08

タカノ綾ソロエキシビション・都会犬(。V・)/@渋谷・パルコミュージアム

タカノ綾はやはり、ヘンテコな想像世界が楽しい。
そこにあるヘンテコなこだわりとか。
逆にあまりに日常的な風景になってしまうと、なんか寂しいなぁ。
とんでもない空想世界で遊んでいて欲しい。

それにしても、土曜の昼間だというのに、真下のスペイン坂の人混みがウソのような閑散さ。
私ひとりしかいない瞬間もあったんじゃないか。
絵は元気になるけど、会場はちょっとさびしすぎ……。なぜ?

4/24まで。

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2006.04.07

朝倉景龍@ヴァニラ画廊

わざわざプロフィールに「現在、19歳」とある。
なのに絵の腕はたいしたものである。
だがまぁ、たとえ絵が上手くても、そういう人はいるだろうし、そのことで驚くには値しない。

たとえば[こちら]のページの右下の絵を見てみれば——ちなみに写真ではなく、鉛筆画だよこれは——ペニスのついた帽子のようなものをかぶっていて、どう考えても絶対変なシチュエーションなのに、その人物はただじっと平然としている。
ペニス帽をファッションで気取っているなら、楽しそうな表情をしてもよさそうだし、いじめにあっているなら泣き出しそうな表情を浮かべてもよさそうな場面なのに、ただひたすら前を見つめているのだ。
しかもその表情は、人形のような無垢な無表情でもない。
むしろ、じっと何かを堪え忍んで無感動の境地に無理矢理自分を閉じ込めているかのような表情である。
それは、左下の血塗れの女性像についても同じだ。

このただならぬ雰囲気はなんなのだろう。
いかにも奇をてらったシチュエーションにも見えるが、でも、媚びは感じられない。
描かれた人物があまりにもマジメにこちらを見つめているので、プッと笑い飛ばすことも、グロテスクだからといって目を背けることも許されない、なんか、そんな緊張感を強いる。

左上の絵は、展示作の中では珍しく怯えたような表情を見せているが、でも、眼球をえぐられていながら、表情からうかがえるのは身体的な痛みよりも精神的な恐怖でしかない。
作家の朝倉氏は、こうした痛みに自分自身は弱いから、こうなりたいという願望を絵に投影しているのだと言った。
なるほど、だから身体的な痛みは排除されているのかもしれない。
でも、それだからこそ、おぞましくもある。
またそれゆえ、単なるSM的なシチュエーションに回収されない何かを湛えているとも言える。

[先のページ]の左下の絵の血しぶきなどは花のように美しい。
とても魅力的だと思う。
(しかも実際は等身大以上のサイズがある)
逆に、まだ手探りかな、という絵もないではないが、それも力づくで(絵を切ったりすることもいとわない)自分のものにしようとできるのは若さゆえか。
だがつまらない常識を覚えずにどんどん冒険していける方がいい。

期間中、作家は画廊内で公開制作もおこなっている。
4/15まで。

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2006.04.05

藤田嗣治&花より工芸&常設展@東京国立近美

藤田嗣治の白はやはりとても素晴らしい。
そしてあの線の微細さ。
特に初期の10年代後半の作品の顔の歪み方がよいなぁ。
南米旅行・帰国・戦争画・そして再びパリに渡っての子供の絵。
もう、盛りだくさんでゲップが出ます。

だけどそこでゲップしてちゃいけないのが近美で、ちゃんと常設展もまわんなきゃね。
今回目を引いたのは、3階の浜田知明と岡上淑子の特集展示。
浜田の絵、岡上の写真コラージュは、シュルレアリスム的な香りぷんぷんで、
こういうのに出会うととてもいい気分になってしまう。
(結構、題材は暗くてシニカルなんだけど)

工芸館の「花より工芸」も、月並みなタイトルに騙されてはいけない。
新収蔵作品を中心とする所蔵作品展だが、
何年か前の人形展の際に購入したと思われる、吉田良、四谷シモン、そしてベルメールなども拝める。

日曜に行ったけど、藤田展もスゴい混んでいたとはいえ、絵に近づけないほどではなかった。

5/21まで。

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2006.04.02

今後メモ【増補版】

メモですfor me(5月まで)。
数日前アップしましたが、全然抜けていたので、増補修正版です。

〜4/15「村瀬恭子展」清澄白河・Taka Ishii Gallery
  ▼ああ、やっぱりいいなぁ。好きです。

〜5/7「東京−ベルリン/ベルリン−東京展」六本木・森美術館
  ▼会場内で開催の「チェ・ウラム」展も必見ですね。see TH No.26

4/5〜5/21「ホルスト・ヤンセン展−北斎へのまなざし−」北浦和・埼玉県立近代美術館
  ▼埼玉の実家に一度帰らなきゃいけないんだが、これに合わせてのばしてます。

4/7〜24「タカノ綾ソロエキシビション・都会犬(。V・)/」渋谷・パルコミュージアム
  ▼芸能人ネタが多いミュージアムだが、ときどきいいのをやってくれる。

4/8〜6/25「CHIKAKU四次元との対話」向ヶ丘遊園・川崎市岡本太郎美術館
  ▼日本の現代美術のヨーロッパ巡回帰国展で、メンツはスゴい。
   それより、7月からの企画「ウルトラマン伝説」ってなんだ?

4/8〜18、4/21〜5/2「甲秀樹展」渋谷・美蕾樹
  ▼1部「Hitogata II」(人形)4/8〜18。
   2部「戯画・秘すれば花」4/21〜5/2。
   「薔薇族」の表紙を描いていただけあって、もう、エロティックです。see TH No.26No.24

4/8〜5/14「山口勝弘展」茨城県近代美術館
  ▼神奈川近美の巡回展だが、行けなかったので。都内には来ないのかな……。

4/10〜15「日乃ケンジュ個展・牧歌への兆し」銀座・スパンアートギャラリー
  ▼ジャン・ジュネの詩編の挿画。繊細なる木炭画。
   4/8までは、「1960-70年代ポスター展」やってますね。

4/15〜5/28「詩人の眼・大岡信コレクション展」三鷹市美術ギャラリー
  ▼個人のコレクションはまた別の意味で面白い。

4/18〜29「佐伯俊男個展」銀座・スパンアートギャラリー
  ▼70年代の作品など。時代を超越した美味です(ヨダレ)。see TH No.23

4/22〜「和歌山県立近代美術館所蔵名品展−大正期の異色画家たち−」練馬区立美術館

4/24〜5/6「駕籠真太郎の世界展・不衛生博覧会」銀座・ヴァニラ画廊
  ▼超弩級のおまつり展覧会、らしい。

4/29〜5/9「山本タカト個展・月逍遊戯——アンドロギュノスの棺」浅草橋・ルーサイト・ギャラリー
  ▼[詳細]see TH No.23

5/6〜16「こやまけんいち個展・憂いの森」渋谷・美蕾樹
  ▼危うくかわいく、痛みのある少女の姿。see TH No.26

5/8〜20「作場知生展・hide out」銀座・ヴァニラ画廊
  ▼「BOXオブジェ」を中心に。ああ、私はそこに棲みたい。see TH No.25

5/11〜22「ニキ・ド・サンファル展」東京・大丸ミュージアム
  ▼カラフルになる前の石膏作品を見せて欲しい。年間パスポートがお得か?

5/15〜6/3「松山賢個展・available」京橋・ギャラリー手
  ▼少女・動物・花柄。エロティックな妄想のシミュレーション。see TH No.22

5/22〜6/3「女犬幻想〜室井亜砂二と女犬の作家展」銀座・ヴァニラ画廊
  ▼こりゃどうよ?って思うけど(笑)、見なきゃはじまんない。

5/27〜8/31「アフリカ・リミックス——多様化するアフリカの現代美術」六本木・森美術館
  ▼なんだかんだ言って森美術館はすばらしい。ウキウキです。

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