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2006.10.29

エルミタージュ、森馨人形展

東京都美術館の大エルミタージュは、まぁ、すごい混みようでした。
だけど見るべきものがあったとすれば、
わたし的には、「廃墟憂愁」でも触れたユベール・ロベールなどの廃墟画だろうか。
「廃墟画コーナー」とは銘打たれてはいなかったのものの、それなりのスペースが割かれ、
なかでもギヨーム・ヴァン・デル・ヘキトの「ケニルワース城の廃墟」などは、
モノクロトーンで結構イマ風な迫力。
ベクシンスキーみたい。

品川での「森馨人形展—愛の蜜—」
エロいとか残虐だとかいいながら、作家ご本人はいたって楽しそう(笑)。
特にエロスばかりが強調されているわけではないが、
だがそこからは少女に対する妄想がさまざまに萌芽し、
ここまで明確にエロスを意図している作家も珍しいのではなかろうか。

森の人形を岩切等が撮影した写真作品も展示されており
かなり広角なレンズや鏡などを巧みに使い、色合いも鮮烈で、斬新かつ美しいものに仕上がっていた。

作家自身が写真を撮り、山口椿が写真ごとに文を添えた作品集も展示に合わせて作られた。
山口の日本語の響きと、森のモノクロの写真の雰囲気がよく合っている。
その写真がベルメールを彷彿とさせたのは、ところどころ写真に着彩されているからだけではなかろう。
おそらく欲望の視線を根底に持っていることがベルメールを思わせるのではないか。
山口の文との組合せはその意味でもうってつけだと言える。

この森馨作品集「parfam de bois」に関しても[こちら]

なおそのHPにあるとおり、森を始めとした山口椿の絵画教室の弟子たちの第一回作品展が、11/5〜11に銀座のギャラリープラットフォームスタジオ(奥野ビル515)で開かれます。

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2006.10.27

「エコール」はエロい?

いよいよ「エコール」が11/4より渋谷・シネマライズで公開されますね。
早く見に行かないと上映中止になってしまうかも、という妄想者もいるようだが(笑)
そこにエロスを感じ取るか、それを見ぬふりして純真な少女の物語として捉えるか、
人の趣味趣向が試される映画かもしれません。
幼児児童の半裸体があっけらかんと見れるわけで、
その手のものにムラムラッとくる人にはたまらんかもしれない。
しかしそこにムラムラッとこなかったとしても
いけないものを見てしまったのかもしれない〜とだれもが思うはずで
その感情を押し殺してしまうかどうか、
そこが試される部分である。

たぶんおそらく、監督のアザリロヴィックはそれを明確に意識している。
「いけないもの」なんてないじゃん、と思ってしまった人は
アザリロヴィックの世界とはまったく無縁だと言っていいだろう。
どっかの雑誌に、下着を着ての水泳シーンは、どうして全裸にならないのか、
規制しているのか、というようなことが書かれていたが
下着だからエロいんじゃないですかっ。
イケナイものが透けて見えてしまいそうで見えないとこがいいわけで、
……あ、いや、別に熱論することじゃないですけど。

その他もろもろは、「分身パラダイス」の記事をぜひご覧くだされ!
陽月の球体関節人形の記事もあります。
(「エコール」がエロいかどうかというのは、球体関節人形がエロいかどうかという命題と実は同じなのかもしれないですね!)

ちなみに「分身パラダイス」には大野一雄の水浴シーンの写真も掲載されているのだが
それもしっとり色っぽいあるよ。

公式サイト
エコール@映画生活
エコール@excite

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2006.10.26

LLL @ 新宿MARZ あとTH28好評発売中です

Th28card少々出回るのが遅くなったところもありますが、
お待たせしました
TH No.28「分身パラダイス」全国の取扱店で好評発売中です!
(左は宣伝用カード。本書の紹介のためでしたら、左のカード画像や書影画像は転載自由です)

さて今号のカバーストーリー(というのか?)にもなっているLOVE LIFE LIVEだが、今日は新宿・MARZでのライブ。
21日の渋谷・ギャラリーコンシールでのオールナイトワンマンライブ4時間は、前半がアコースティック、後半がエレクトリックな構成だったが、でもやはりそこはギャラリーのスペース、床に座った観客を目の前に、ヴォーカルにスポットライトも当たらない薄暗い空間で、どちらかというと家庭的で親密感の楽しめるライブだった。

それに較べるとMARZは、舞台は高いし、幕は下りてるし、いかにもいかにもステージという空間。
LOVE LIFE LIVEがうまいなぁと思うのは、そのステージ性をちゃんと意識した演出を考え出してきているところ。
出だしからイメージは強烈だった。
大音響の中に登場するのは真っ赤な和傘を持った和装のmiu。
その姿を見て、隅の方で床に座っていた女の子らが立ち上がったもんね。
(ケニー氏いわく、その演出はストリップのステージ調)
そこからは、LOVE LIFE LIVEのひとつの顔でもある、ダークな雰囲気の曲が続く。
そのステージパフォーマンスの迫力は鬼気迫るものがあって、毎回のように見てても飽きないのは、ジーンズ姿でステージに上がって歌いました終わり、みたいなバンドとは違って、パフォーマンスの演出でいろいろ楽しませてくれ驚かせてくれるからだろう。
舞台も広いんでmiuは思いっきり飛び跳ね飛び回っていたが(最後にはポロリ寸前(≧∇≦))、肉体的運動量は今回が一番だったのではなかろうかのう……。

今回はLOVE LIFE LIVEのウリのひとつであるmiuのMCがほとんどなかったのが残念だったが
幕間に客席脇でおこなわれたコントの代わりに、そこでMCを披露するっていう手も(笑)……次回の演出に期待。

次のライブは10/31@渋谷Plug。今度はMCたっぷりらしいです。
詳しくはこちら

追伸・かっちょいいMarzでのライブ写真がmixiのprayerさんのフォトアルバムにアップされてます。
これはもう、艶歌ですねっ☆
mixiに入っている方はぜひご覧下さいまし。
http://mixi.jp/view_album.pl?page=5&mode=photo&id=860036

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土井典人形展→くらっぷ

土井典人形展@銀座・スパンアートギャラリーは、
絢爛きらびやかな人形&オブジェたち。
きらきらと生命力に満ちているというか。
それをモノクロの世界に封じ込めた宝田久人の写真は
モノクロであるがゆえにきらめきのエッセンスが凝縮されている印象だ。

土井さんは、女の人とかはアクセサリーをたくさん持っているんだから
この人形たちを買ったら、そうしたものでもっと飾ってくれればいいのに、と
おしゃっていたが、そうして持ち主のきらびやかさを身にまとい、
さらには趣味趣向や感情も反映していって、人形は持ち主のイロに染まり
いわば身近な分身になっていくんだろうか。
まぁもっとシンプルに考えて、アクセサリ置きのための人形というのも面白いなと思った。

28日(土)まで。(ギャラリーへのリンクは左欄から)

新宿タイニイアリスでくらっぷ「掟の門」
知的障害者たちが演じる、会話だけで構成される演劇。
いったいどういうもんだろうと思って見に行ったが、演出も担当するもりながまことが中心に入ることによって、演劇の体裁はとりあえず整えられる。
しかし知的障害者たちが単なるその添え物であるかというと、全然そんなことはなく、むしろ振り回されるのはもりながの方である。
演出はもちろんある。ここはこうしろと、もりながは結構口を酸っぱくして教え込むそうである。
だが、座っていろと教えて、座っていなければいけないことを理解して、そのうえで立ち上がってしまうのだったら、その意思をもりながは潰そうとはしない。
そこに健常者とはちがう世界を感じることが、たぶん大切なのだろう。
驚くべきことに、知的障害者たちは堂々と演じ、障害者だからという同情の念とか逆に無気味さとかそういうのは、一切湧いてこなかった。
単純に、そこに繰り広げられる所作やセリフが面白いのである。
しかもナチュラルに条理を逸した言動が、その世界の不条理さを非常に説得力のあるものにするのである。
演劇臭い演劇なんかよりずっとナチュラルで好感が持てる。

26日にも公演あり。28日にも別の演目&会場で公演あり。[詳細]

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2006.10.20

ビル・ヴィオラ@森

森美術館でやっているビル・ヴィオラは結構な迫力ですね。
ほとんどがスローモーションの映像なんで、
じっとじっとがまんして、最後にどわわわわ〜〜んと来るのを待たなきゃいけないとか
なにかと忍耐が必要になるんだけど、
やっぱりその忍耐あってこその感動ってやつなのかな……?

展望台にのぼるのが第一目的でよくわからずに会場に入った人たちなど
ただ通り過ぎるだけなら、何がなにやら、って感じではなかろうか。
横断歩道の待ち時間の表示のように
「洪水(?)まであと何秒」とか表示してると面白いのに(笑)。
水をうまく使った作品が多くて、「サレンダー/沈潜」とかも
最後におおっこういう仕掛けか、と驚いたのだが、そういう感動も最初から見ないとね、半減してしまう。

中沢新一がトークで、ヴィオラの作品は死者の側から見た映像だ、ということを言っていたが
それはなるほど鋭いと思った。
映像としてはリアルなのに、現実感が欠けている感じ、世界のウラ側から覗き見ている感じは
まさにそこから来る感覚であろう。

そして、「死者」が見る「現実」も、電源を切ればパッと消えてしまう。
現実が消え、虚無の世界に死者たるわれわれが残される……そんな瞬間をも予期させるが
それゆえヴィオラにとって現実は、「ゆめ」のようにはかないものなのかもしれない。

「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」は来年1/8まで。

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2006.10.10

「人・形」展@丸善丸の内本店

あのスペースにこれだけの作家が……さすがにかなりギュウギュウな感じだったが、それだけに密度の濃い展示というか。
創作人形からフィギュアの類までも含めてヴァリエーション豊かなものだったが、
でもやはり私はフィギュア系よりは球体関節人形系の方が心惹かれるかなぁ……。

TH No.28のインタビューで井桁裕子さんが“人形は精神的に「依代(よりしろ)」になるかどうかが大きい”と語っているのだが
自分の魂を抜かれて持って行かれてしまいそうな、そんな感覚を人形に覚えることもしばしばで
そうした精神的なつながりが人形に魅惑される大きな要因になっているにちがいない。
それはもちろん、球体関節でなくてもそうした人形はあるし、たとえば天野可淡のオブジェのような作品もそうだ。

そのようにして「依代」になるということはおそらく、人形が観る者の分身としての魂を持つということでもあるのだろう。
たぶん、フィギュアにはそれがない。
フィギュアはあくまでも観る者にとっては「他者」で、「萌える対象」なのだ。

彫刻も含めてその境界線は一見曖昧なようにも見えるが、しかし結構しっかりとした差異はあるような気がする。
た、たぶんねぇ。

展示は今日まででした。[公式HP]

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2006.10.07

ベルギー@西洋&西牧徹@ヴァニラ

Ginzaベルギー王立美術館展は、まぁ、ブリューゲルとかスワーネンブルフの「地獄のアイアネス」(モノクロだし左半分だけだけど、こんな絵)とかは興味深かったけど、全般的にもうひとつ面白みが……といった印象。
だけどアンソールが出てきて、象徴派が出てくると、ああやっぱりこの世界いいなぁと思ってしまう。デルヴィルの「トリスタンとイゾルデ」とかメルリの「目覚め」とか。グッときてしまうんですね。
あと、スミッツの漆黒の中に浮かび上がる黒い服の肖像画も異様な雰囲気を発していて、印象に残った。
デルヴォーの油彩は2点だったが、どっちも一度日本に来てるんじゃないかなぁ。残念。

でも西洋美術館は、常設展で北方の妙な作品を楽しめるので、それはそれでとてもうれしい。
12/10まで。

その足でヴァニラ画廊の西牧徹展「Child Armor」に。
今日が最終日でした。
胴が短く足を強調して極端にデフォルメされた、太股までの長いブーツを履いた少女のエロエロな鉛筆画がメイン。
しかもその足でケーキを踏んづけているのがいいらしい(笑。
人の趣味趣向はほんと奥深いです(笑。
少女の顔などもリアルと言うよりは人形的に戯画化されていて(作者は「黒戯画」と称している)、それも特徴的。

薄いタイツのようなものを履いていて、そのタイツの中でペニスを勃起させている絵も面白い。
いちおう男を描いているそうだが、胸はないものの肉付きは少女的で、そこからかもしだされる中性的な雰囲気が、タイツとともにペニスの横暴さをオブラートに包んでいるというか、逆にそれがエロティックと言うか。

もう、終わってしまいました。

写真は展示とかとは一切関係なく、銀座の内装工事現場を見守る人形の監督……?

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L.L.L. @高円寺GEAR

Lllなんだか猛突進始めた感じのLOVE LIFE LIVE。
秋になってしっとりとなるんかな、と思いきや、全然そうじゃなく、特に今回のライブはテンション高かったですねぇ!外の嵐を呼び込んだみたい。流血事件?もあった(乱闘じゃないよ)。
堀江ケニー氏のタンバリンデビューも一部の人には感慨深かった模様……笑。
どんどんステージパフォーマンスが派手になってきて、このバンドのひとつの形が見えてきたのかなぁ、という気も。

10月は毎週のようにライブあり。[スケジュールなど]
写真はライブ会場で好評発売中のCD(DVD付!)1500円
TH No.28掲載のProject Love Life Liveは“ないものねだり”です。

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2006.10.04

芸術の秋?

メモメモ for me.

いつのまにか10月ですね。
夏は子どもやファミリーを意識した企画ばかりだった美術館も
秋になってあちこちであれやこれやっていう感じですねぇ。

上野でダリ(@上野の森)やベルギー(@国立西洋)は始まってる。
ベルギーは結構期待してるんですけど。どうなんでしょう。
10/19〜は大エルミタージュ(@東京都美)とかもある。
10/7〜ルソー@世田谷
10/7〜伊東豊雄@オペラシティ
10/14〜大竹伸朗@東京都現代
10/14〜ビル・ヴィオラ@森
10/21〜第3回府中ビエンナーレ〜美と価値 ポストバブル世代の7人@府中
10/31〜コレクター砂盃富男が見た20世紀美術「迷宮+美術館」@松濤


ギャラリー系
9/13〜10/14:池田学「景色」@中目黒・ミヅマ
    とんでもない“景色”です。
9/28〜10/7:西牧徹@ヴァニラ
10/2〜14:大野一雄生誕100年祭「頌・大野一雄」@浅草橋・マキイマサルファインアーツ
10/3〜28:小林孝亘@日本橋・西村
10/4〜10:「 人・形展」- Hito Gata -
    TH No.28でインタビューした井桁裕子を始め、清水真理、
    山本じん 山吉由利子などなど……これは結構面白いかも。
    @丸の内オアゾ・丸善本店
10/10〜21:直江眞砂「猫の王国美術館」原画展@銀座・青木
    世界の名画を猫で描く。ヘン。
10/14〜23:大野一雄 生誕100年祭写真展『秘する肉体(からだ)』@新宿・コニカミノルタプラザ
    TH No.28に記事あり。4頁。
10/16〜28:土井典人形展—薔薇の数—@銀座・スパンアートギャラリー
    久々です。TH No.28に記事あり。土井典HP
10/27〜11/6:森馨 人形展「愛の蜜」@品川・啓祐堂
    TH No.27にて既報。
11/14〜19:綺朔 ちいこ 個展「散歩゜のあとは 乱歩゜の珈琲」@谷中・珈琲 乱歩゜

年明けは1/23〜28:トレヴァー・ブラウン「Rubber Doll」@渋谷・ルデコ
    ラバーフェチの人は必見でしょう(笑)。TH No.28に記事あり!!

あと、LOVE LIFE LIVEのライブ情報&試聴は[こちら]
もちろんTH No.27TH No.28に掲載のProject Love Life Liveも合わせてお楽しみを。

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2006.10.01

TH No.28「分身パラダイス」いよいよ発売!

トーキングヘッズ叢書(TH Series)No.28
「分身パラダイス」
が、いよいよ10/16ごろ発売となります!!

みなさまよろしくお願いいたします!!


A5判・並製・176ページ
定価/本体1,333円・税込1,400円
発行:アトリエサード/発売:書苑新社
ISBN 4-88375-078-7

【主な内容】
■井桁裕子インタビュー「人形と分身」◎取材・文=志賀信夫
■井桁裕子〜ポートレイト人形の幻惑
■山本竜基展「千の自画像」〜分身たちの壮絶な大バトル大会!◎沙月樹京
■夢野久作と分身◎朝宮運河
■大塚英志が「多重人格探偵サイコ」に反映させてしまったもの◎本橋牛乳
■愛を求める分身〜人間はかつて“二倍体”だった!!◎林アサコ
■ジーキル博士とハイド氏◎河野悦子
■“石内都”を失った石内都
■伊藤潤二のめくるめく分身世界◎朝宮運河
■アルトーと相撲をとる私《前編》〜グノーシス主義を主たる土俵として◎鷲沢弘志
■わたしはだれだ!◎名栗石
■ドングリの双葉◎槻城ゆう子
■腹話術愛シンドローム★分身捜索珍道中の巻◎文山未絵
■ふたごWORLD◎本多祥子
■double作品レビュー/江戸川乱歩・エルンスト・佐々木淳子・西島大介・
 ディック・手塚治虫・近藤ようこ・吾妻ひでお・塚本晋也「双生児」等29作品
 ◎古川沙織・虚青裕・井手亞紀子・トミオカユーコ他
——————
TH RECOMMENDATION
■映画「エコール」小特集(渋谷シネマライズにて公開)
■エコール ドール/人形制作:陽月、撮影:吉田良
■大野一雄写真展「秘する肉体(からだ)」
■トレヴァー・ブラウン〜速報!次のトレヴァーはラバーです
■「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」
■土井典人形展—薔薇の数—
 ほか
■特選街:小林嵯峨・宮下省死・山本萌・相良ゆみ・水と油など
——————
■project Love Life Live〜ないものねだり
■表紙写真:堀江ケニー
 インスタレーション:クボタマユミ、マチカナコ

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