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2006.11.30

実相寺昭雄のアンチ本物志向

実相寺昭雄氏が亡くなった。
寺倉正太郎氏のセッティングで、実相寺氏と落語家の柳家喬太郎氏との対談を企画してから
まだ2年も経っていない(→No.23昭和幻影絵巻

その号でマンガ家の加藤礼次朗氏は、実相寺氏は見世物小屋のせこさみたいなものが好きだ、という鋭い指摘をおこなっていたが、それはしばしば見て見ぬ振りをしなければならない虚構世界のルールを踏み越え、時にはあえてせこさを前面に押し出し、見る者を驚嘆させた。

実相寺氏はおそらく、本物だろうと偽物だろうと、そんなことは問題ではなかった。
どうせすべてが嘘っぱちなんだから、別にこだわりにこだわって本物を作らなくてもいいんじゃないの?とか思っていたのではなかろうか。

だがそうしたことの結果から、おそらく意図したわけでもないのに、社会への鋭い批判性をも導き出してしまっていたところが、実相寺氏の才能だろう。
カルトになりたかったわけではないが、その才能が見る者から熱狂的な支持を集める結果になる。

だが、虚飾を見抜いたアンチ本物志向は、逆に言えば、本物とは何かを知っていたからこそ堂々とおこなえるワザだろう。
実相寺氏は昔の風景を愛し続けた。

ご冥福をお祈りいたします。

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2006.11.25

大人ってなに?

「大人」とは……広●苑を引くと「舞台ウラで何があろうと、ふだんとまったく同じ態度でステージに立ってライブをこなすこと」とある。
さすが鋭いぞ、広●苑(笑)。
でもねぇ、それをバネにしてフンマン煮えたぎらせながらも客を盛り上げていく方が、エンターテイナーとしての魅力はあるよね。
表現者は、表現の面においては「大人」ではない方が魅力的だと思う。
……と、ブルーな部屋があわや血に紅く染まりかけた日に思いました(笑)。

大竹伸朗もまさにアンチ「大人」なアーティストである。
東京都現代美術館の「全景」展は、少年の頃の絵画から何から何までが美術館を覆い尽くした圧倒的な迫力。
少年時代で一部屋、大学時代で一部屋、しかも天井近くにまで絵がいくつも掲げられ、その他ロンドンや香港での滞在時期を含めアーティストとして世に出る前の作品が、これほどの量出品された回顧展も珍しいだろう。
だがそのことこそ、大竹が美術界の「大人」の決まり事から自由であることの証左なのだ。
彼の表現は、アーティストとして美術家に認められたことでどうこう変わるものではないのである。
少年(=「大人」以前)の時の作品も、最近の作品同様の価値を持つ。
(逆に言えば、最近の作品も「大人」以前のままなのだ)。

それにしても、絵にしても、集積され再構成されたゴミの数々にしても、そこから感じるエネルギーはものすごい。
圧倒的なテンションで襲いかかってくる。
「知ったこっちゃない。自分の一生なんだからやりたことをやる」
でも、それで人を惹きつけるのは凡人じゃできないよ。
ダリに並ぶくらいならこっちを観た方がよっぽどいいと思うね。

東京都現代美術館からちいと歩いた清澄の倉庫に集積したギャラリーたち。
結構な観光名所(?)になっているようで、若者多いなぁ。
前来たときはそんなでもなかったよーな。
その中の小山登美夫ギャラリーでの蜷川実花は特に目新しさがなく……。「大人」だね……。
SHUGOARTSでの森村泰昌「烈火の季節 / なにものかへのレクイエム・その壱」は、いいかも。
三島由紀夫に扮してクーデター未遂のシーンを演じたり。
こういうことしないと対象に接近できないのは、「大人でない」証拠です。
てゆーか、「大人」だったら、やる前になんとなく生半可な理解しちゃってあきらめちゃうでしょ。
三島のやつはDVD版もあって流れてる。笑いはもうひとつかな……。

HIROMI YOSHII GALLERYもわりといつも面白いんだよね。
いまは榎本耕一展。ポップでかわいい感じの絵があると思えば抽象的なぐちゃぐちゃあり。
ポップにまとまっちゃわないところが「大人」じゃないね。

というわけで、今回は「大人」をキーワードにまとめてみましたが……
冒頭の非「大人」はおなじみLLLでした。

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2006.11.17

ダリよりは砂盃&乱歩

上野の森美術館の「ダリ回顧展」は、もうすごい人ですね。
なんでこんなにダリを見たい人がいるんでしょう……。
絵画の点数に対して、やたらでかいパネルが壁の広い面積を占めていて、
そんなんでわざわざ壁を埋めるなら、絵と絵の間隔を広げてくれればまだ見やすいだろうに。

見慣れた絵は飛ばして、まぁ一番見どころがあるとするなら、比較的晩年の作品を集めた最後の部屋だろうか。
溶けた時計みたいな光景よりは、分子の動きみたいなスピード感が表現されたものに今回は目を引かれた。
映画とか見なければさほど時間かからずに回れるので、
閉館間近の空いた時間帯を狙うのがいいかも。1/4まで。

シュールレアリズムな作品に接したいなら、渋谷・松濤美術館での砂盃富男のコレクション展「迷宮+美術館」の方がおトクか。
300円でベルメールもエルンストもフィニも彌生も見れちゃう、っていうとかなりおトク感あるでしょ?
こうした展覧会は、これぞという大作はないかもしれないが、その代わりに、街角の小さなギャラリーで出会ったかのような、そんな親密感を作品に感じることができると思う。12/10まで。

あと最近は、谷中の喫茶店「乱歩゜」に行きましたね。
テーブルの上や壁がさまざまなもので飾られているレトロチックな怪しい喫茶店。
そこで開かれている綺朔ちいこ嬢の個展は、乙女チックでエロチックな少女たち。
絵の暗く濁った配色とアンニュイな雰囲気が、店の怪しさとみごとにマッチしてました(いいことなんだかどうなんだか笑)。
そうか、綺朔さんの絵って、乱歩的だったんですね(発見)。
19日まで。土日の日中は混雑するそうなので、夕刻過ぎがいいみたいです。
[詳細]

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2006.11.13

美蕾樹 閉廊とその後

渋谷は西武百貨店のすぐ近くの雑居ビル。
その好立地に1983年9月に開廊し、23年間にわたって、シュールリアルで幻想的でエロティックで前衛的で異端的な作品を数多く紹介してきたアート・スペース美蕾樹が2006年9月をもって閉廊した。
9月下旬に電話をお掛けしたところ、いま運送屋に荷物を運んでもらうとこだと聞いてビックリ。
突然のことで作家などにもほとんど連絡がなかったようで、「美蕾樹がなくなった」という噂が「(主宰の)生越さんが亡くなった」という誤報となって伝わったこともあったらしい。
私も「美蕾樹がなくなった」と言うと「生越さん倒れたの?」とか聞かれることもしばしば。

生越さんは変わらずお元気な様子で、昨日は「クロージング・パーティ」が華やかに開かれた。
渋谷の美蕾樹はなくなったものの、今後も“ゲリラ的”に展覧会を開いていくとのこと。
来年2月には、まず、美蕾樹で何度も個展を開いている甲秀樹氏の個展が銀座で予定されている。(詳細は後日!)

あの渋谷のど真ん中の妖しいビル、しかもエレベータを下りるといきなり画廊の中というドキドキのスペースがなくなってしまうのは非常に残念だが、今後の活動にもぜひとも注目していきたいですね。

※参照:甲秀樹[No.2426

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2006.11.10

メモ:頽廃藝術展

11/11(土)頽廃藝術展@池袋 CLUB ADDICT
  ★展示=カリスマミー、堀江ケニー、富崎NORI
  ★ライブ18:00〜 マリア観音、高橋よしあき(ex.テーゼ)、
            犬神サーカス団、AUTO-MOD
  ★ライブ24:00〜 LOVE LIFE LIVE、情念、〜Selia〜、
            Rott(from PRiVATE:I's)、
            流血食虫本舗らりるれろ(小道具屋進一ユニット)
            DJ : tezya(MeGAROPA)
料金など詳細は[こちら]へ!

※参照:堀江ケニー[No.25262728
    富崎NORI[No.26
    LOVE LIFE LIVE[No.2728

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2006.11.06

オーストラリアと椿とフラン

●プリズム:オーストラリア現代美術展@ブリジストン美術館

点描や幾何学的な模様による素朴な表現、先祖、暴力・差別、などといったところになぜか集約されてしまう感じで、中国現代美術などと比較するとヴァリエーションが乏しいし、エネルギーもね、いまひとつといった感じか(中国が元気すぎるのかも)。
でもそのなかで、ピッチニーニの奇妙で気色悪い作品は目を引いた。
とはいえ、「10人にひとりにプレゼント」に当たったらしく(そんな特典あるの知らんかった)、カタログとかポストカードとかクリアファイルとかもらったので、とてもいい展覧会である。
12/3まで。

●銀座・奥野ビルのPLATFORM STUDIOでは、山口椿絵画教室の弟子たちの作品展。
オープニングパフォーマンスとして山口椿が絵を描いたが、ガラスを立ててスポットライトをあて、ウラ側から描かれる絵を観客に見せる趣向がまた、なかなか面白かったのであった。[詳細]

●フラン(カタカナで書くと可愛い感じ)
リンクだけ。[ここ](BBSは必見...つーかエロカキコしかないじゃん(笑))
LLLが今後あらぬ方向に進んでいくことになったとしたら、今日(11/5)はその記念すべき日として記録されよう。

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2006.11.01

森口裕二@ヴァニラ、文山未絵@peppers

銀座のヴァニラ画廊では森口裕二の個展。
妖怪をモチーフにした大作が並ぶが、色がカラフルで、魑魅魍魎たちがなぜだかかわいい。
色っぽくて悪戯好きそうな少女の顔がまたよいよね。
一見レトロ風だけど、レトロにならない現代っぽさがどことなく混ざっていて面白い。
11/4まで。

THに毎号寄稿いただいている文山未絵さんが、銀座のペッパーズギャラリー
自費出版本やポストカードを展示販売しています。
「職人芸」シリーズが手に入るよ。
これも11/4まで。

今日(っていうかもう昨日か)はLove Life Liveのライブがあったが、
今回はアコースティック・スタイルで、だけど客席ともども結構盛り上がったですね。
ケニーさんの芸人ぶりにもますます磨きが(?)かかっています。
でもハロウィーンだからといって……せっかくマスコットガールいるんだから、アンケート回収係にしとかないで、アメ配りはやはり彼女の方が!!……
いえ、TH宣伝ありがとうございました。

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