塩田千春展@神奈川県県民ホール
第1回の横浜トリエンナーレで巨大なドレスを展示し、観る者を圧倒した塩田千春。
焼け焦げたピアノの回りに、やはり焼けてほとんど炭と化した椅子を半円形に配置し、それらを天井からの無数の黒い糸で結び付け、しかもその糸は広い展示スペースの壁をも這い回る。
他に、ベルリンで集めた窓ガラスを天井まで積み上げたものなど、スケールの大きなインスタレーションや映像作品などで構成された個展。
その始点にあるのは荒廃と退廃だが、塩田の特色は、そこから根源的な生命力を立ち上らせるところだろう。
たとえばそれは、焼け焦げたピアノや椅子に絡められた糸の、ピンと張られた力強さに感じることができる。
自ら泥まみれになったり、塗料まみれになったりするのも、自分にまとわりついたあらゆる虚飾をぬぐい去り、そのうえで生命の根源的な力を確かめようとする所作だろう。
それはもちろん、自分の存在に対する強い不安、リアル感の欠如の裏返しであると言えるが、それに対峙しようとする作家は数多いるものの、これほどまでに泥臭くなれる日本人作家は塩田くらいではなかろうか。
しかも廃墟的なものを演出しながらも、キーファーのように歴史を重層的に塗り込めることはなく、どことなく表層的なのが、現代日本的かも。
でもそれは欠点ではなく、それゆえに、われわれに響いてくるものがあるのだ、と思う。
11月11日まで。
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