マキメの否ダンス-悦ダンス
久々に見たダンス。だが久々に面白いものを見せてもらった気が。
万城目純のソロダンス「solos」。
小さなスペースにピアノ一台と椅子ひとつ。
しかしそれらとダンスはほとんど関係なくて、セットは何もないに等しい。
何もない空間を、最初は力なく、円を描くようにトボトボ歩き続ける。
そこにやがて身振り手振りが加わってくるが、それはとてもじゃないが美しいダンスからはほど遠い。
そう、このダンスは、ダンスというものを徹底的に着崩したアンチダンス…というか、ダンスを喪失したダンサーの醜悪というものを前面に押し出したダンスなのだ。
顔を歪ませたりにやついたりハァハァ息をあがらせたりと、ダンサーとしてあるまじきことも客に見せつける。
てゆーか、セットはないに等しいと書いたが、大切なセットがひとつあった。
舞台の正面に据えられた一台のビデオカメラだ。
万城目はときにカメラ目線を送り、ときにカメラに向かってポーズをする。
フリルの付いた衣装とともに、自惚れを表象するその仕掛けが、ダンスをますます醜悪なものにする。
だがしかし、だからといってこの作品自体が醜悪なわけではない。
醜悪でありながら、それでも必死に身体を動かし続けるダンサーの姿の背後に、身体を動かすことの悦びが立ち上がってくるのだ。
拍手。
2/9、雪の四ッ谷「コア石響」にて
最近のコメント